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第79回全日本学生音楽コンクール北海道大会
2025北海道毎日学生音楽コンクール

審査員講評

ピアノ/フルート/声楽/バイオリン
各部門審査員のなかから代表の先生に
講評をお寄せいただきました

ピアノ部門 審査員
練木 繁夫 先生
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猛暑が続いた夏が過ぎ秋の息吹が感じられる10月、遠くの山々に冠雪が見られるようになると、 あれだけ長く続いた真夏日をもう忘れている自分に気づきます。 全日本学生音楽コンクール北海道大会ピアノ部門では、例年の期待どおり、 レヴェルの高い演奏に接することが出来ました。小学生の部からは10人、中学生の部は12人、高校生の部からは11人が本選に通過し、それぞれが個性あふれる音楽を披露してくれました。 高校の部で演奏した子供たちは、都市部の音楽高校に通う生徒たちではなく、全て北海道からの参加者だったことも記しておきたいと思います。 今や世界の国際コンクールは、残念ながら、音楽の根本からかけ離れている傾向が感じられる中、本選に残った全ての子供たちが心から音楽を愛して演じてくれた姿は、とても新鮮に、しかも嬉しく思えました。 これは、一重に教育してくださっている先生方の信念に基づいているものと感じました。 このままこの子たちが成長して素晴らしい人間性を築き上げる礎になるとするならば、未来は明るくそして憎しみのない世界になると信じます。音楽という素晴らしい芸術が子供たちの未来に少しでも良い影響を及ぼすとするならば、 音楽の神は笑顔で我々を褒めてくれるでしょう。 札幌での経験は教育者としての私を見直し、そして私の胸に信じていたものを私の生徒たちに伝えて行くことの大切さを強く感じさせてくれた日々でした。 今回は審査員の先生方ともお近 づきになれて、とても思い出深い札幌になりました。

フルート部門 審査員
八條 美奈子 先生

【小学生】2名 お二人とも純真な心洗われる演奏でした。フルートへの真っ直ぐな思いがそのまま音となって、客席へと届いてきました。今回1位の方は6年生、2位の方は4年生でしたが、これからも成長の段階に逆らうことなく、素直にフルートに親しみ続けていただけたらと思います。加えて、フルート以外の音楽にも興味をもち、幅広い経験を重ねて、この先更に豊かな表現ができるようになることを期待しています。 【中学生】7名 シュターミッツの協奏曲第3楽章と、モーツァルトのロンドが課題でした。いずれもロンド形式で、軽快な同一テーマが繰り返し演奏されます。さて、同じメロディを何回も繰り返して演奏するのは実はかなり難しいことなのではないでしょうか。都度、新鮮な気持ちで旋律に息吹を与えていきたいものですが、特に中学生ですと体力や集中力が障壁となって曲の最後までたどり着くのがやっと、となりがちです。また、技術的にも、無理のない発音や呼吸法、ダブルタンギングなど、フルートの奏法の確立を目指してまだまだ頑張ってもらいたいと思いました。そんな中、上位入賞された方は技術的な安定感があり、特に1位の方はモーツァルトらしい語り口で自然な音楽が奏でられ、大変すばらしかったと思います。 【高校生】5名 今回北海道大会ではハンガリー田園幻想曲の選択者はいませんでしたが、時代も国も様々な課題曲がありました。同じフランスでも、19世紀のトゥルーと20世紀初頭のユーでは、パリ音楽院でのベーム式導入以前と以後という全く異なる環境の作品ですし、ベートーヴェンの影響が強く感じられるドイツのクーラウには、また別のアプローチが求められます。受験者のみなさんは高校生らしく、自分が選択した作品の背景を勉強した上で、このコンクールに臨んでくれたでしょうか? さて、さすがに高校生ともなればフルートの技術は安定し、比較的規模の大きな作品をまとめあげる体力や精神力も充実してきます。そこで更に力を注いでもらいたいのは、音程やリズムの感覚をより研ぎ澄ませるソルフェージュ力の向上です。例えば、ピアノとのチューニングが合っていないまま、演奏スタートしてしまう人が多いです。コンクールですし、緊張しているのと時間の制約があるのは理解しますが、そういう一瞬こそ実力を隠しきれないものなのかもしれないと思いながら、見守っておりました。 1位の方は、確かなソルフェージュ力が感じられ、よく勉強してある演奏でしたが、トゥルーが生きたベルエポックのパリをできるだけ想像して、更に豊かな表現を目指して頑張ってください。他の方も、「フルート」を軸とした学びを深めて、演奏の質を向上させていっていただきたいと思います。 【最後に】 北海道でフルート部門が開催されるようになりしばらく経つ中で、学生のレベル向上著しいという実感を強くもっています。関係者の皆様のご尽力のおかげで、道内各地でフルート文化が花開いていることに、感謝申し上げます。

声楽部門 審査員
大嶋 恵人 先生

声楽部門は演奏内容が予選に比べ充実感が増し、よく勉強されてステージに臨まれたことを感じました。予選の反省を踏まえ細かい修正が丁寧になされた結果のように思います。 中学の部 5名 それぞれの持ち味が発揮された演奏だったと思います。レガートで歌うことを理解されている歌唱でした。言葉や詩を理解して、それをしっかり伝えるための声楽の技術(特に発声法)をしっかり身に着けていきましょう。この時期、声も心も体の成長と同じく大きく変化していきます。けっして無理せず一歩ずつ進みましょう。一番大切なのは歌いたい、音楽をしたいという気持ちです。 高校の部 5名 丁寧で傷のない演奏が多かったため難しい審査でした。それでも課題曲、自由曲の出来に点数の差が出たように思います。どちらの曲もあなたが歌う大切な曲です。愛情をもって歌いましょう。中学生と同じく心と体の成長過程での声づくりが大切です。背伸びしすぎたりせず、地道に声を作っていって欲しいと思います。 歌だけでなく色々な芸術にも興味を持たれることを願っています。 大学の部 9名 この部門ではすでにいくつかのステージを踏まれた方の演奏が多かったように思われます。たたずまいの素晴らしい方もおられました。 ご自身の声の魅力は何なのか、身の丈に合った選曲だったのかを確認ください。 オペラを歌われた方が多かったです。あらすじ・背景・作曲者の音楽スタイルについて理解していたか、役のキャラクターを自分のものとしていたか、本当に作品に共感していたのか、といったことが頭をよぎりました。演奏家は作品に込められた思いを的確に読み取り具現化しなくてはなりません。作品の本質を理解した上で、ご自身のものとした演奏を心がけましょう。 これからも声楽家の道のりは続いて行きます。身近な課題を少しずつ克服しながら高みを目指して歩まれることを願っています。

バイオリン部門 審査員
沼田 園子 先生
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先日の本選会の日は、中島公園の美しい自然の中で鳥の声や初秋の景色に、ふとヨーロッパの空気を感じました。作曲家達も自然からインスピレーションを得たように、北海道は自然の中で沢山の音楽のイメージを感じられる風土であるかもしれません。 本選会では幼稚園生から高校生まで総勢39名の熱演を、とても楽しく聞かせていただきました。 幼児、小学校低学年の演奏では、皆さん全体的に音程やリズムを正確に演奏できており、中には楽しそうに音楽を感じながら弾いている方もいらっしゃいました。この時期は、まず練習時間を毎日の生活に楽しく取り入れ、練習の中でバイオリンを弾く喜びが持てるように工夫してください。 小学校中学年、高学年の部では、バロック、古典、ロマン派にわたる作品の演奏でした。少しずつテクニックも複雑になり、細かいコントロールが必要な曲となります。この段階からスケールやエチュードの成果が曲の中で表れるようになります。ポジション移動やボーイングの先から元まで神経を行き渡らせるための地道な基礎練習が、その人ならではの音色を創っていきます。そうしたテクニックを使って、変奏曲などの場合はヴァリエーションによる音色やキャラクターの変化が少しでも出せると良いですね。 中学生の演奏では、それぞれの個性がはっきり表れる時期のようでとても興味深く聞かせてもらいました。自分の音楽の独自の世界を十分に発揮し、研ぎ澄まされた集中力で弾ききった演奏もありました。ロマン派の作品を技術と情感の両方をバランス良く演奏してゆくのが工夫のしどころです。 何かと忙しい中学時代だと思いますが、是非、同時代の歴史やオーケストラ曲、オペラ、室内楽などに興味を持って触れてほしいと思います。音楽を豊かにする栄養をたくさん取り入れてください。 高校生は大人の演奏への入り口、自分の演奏が聴いているお客様にどう伝わっているかを意識して曲作りができると良いですね。演奏する曲の作曲家の意図を深く理解し、それによる曲の再構成、細部の表現の工夫、合理的なテクニックなど、より広い視野での演奏への取り組みが必要になります。充分にそれらを熟考した上で、加えてエンターテーメントの要素が加われば、充実した華やかな演奏になるでしょう。本選では既にそのような演奏も何人か聞くことができ聞きごたえがありました。これからが本当に楽しみです。 今皆さんは伸び盛り、どうか人生を豊かにする音楽のすばらしさを胸に、こつこつと次のステージに向け果敢に挑戦してください。今年も生き生きとした若い人たちの演奏をたくさん聞くことができました。渾身の先生方のご指導とご家族の方々のサポートの賜物、胸が熱くなる思いです。 最後になりましたが、このような学生さんたちにとって素晴らしい演奏の機会を提供、運営されている毎日新聞北海道事業グループの方々に心より敬意を表します。

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