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第42回 毎日こどもピアノコンクール

本 選 会

審査員講評

コンクールを終えて、当番審査員の各先生から各部門についての講評をお寄せいただきました。

幼児の部

​酒井由美子 先生

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本選出場おめでとうございます。かわいいピアニストたちの熱演に審査員席から笑顔が溢れました。ご家族や指導者の皆様が一生懸命取り組んだこの時間は一生の宝ですね。 幼児期は耳を育てることが大切です。 打鍵だけに集中せず、顔を上げて、耳を使って、音楽を奏でることを学びましょう。「間違えずに弾く」ではなく「良い音楽を奏でる」をしていた方が入賞に繋がっていました。 また、この時期から良い楽器に触れることも耳を育てる近道です。この機会に環境も整えてみましょう。

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小学校 1 年生の部

村上和歌子 先生

本選に出場された皆様、ご指導されました先生方、ご家族、全ての方々におめでとうございます。 小1の部。今回が初めての毎コン参加の方も多くいらしたことでしょう。つぶらな瞳で、清らかな心で、真っ直ぐな耳で、小学校一年生のリトルピアニストさんたちは大熱演。大変ハイレベルな素晴らしい演奏をされて、審査員一同圧倒されました。 舞台に1人で出てきて可愛いお辞儀をして楽しく演奏出来ただけでもうそれで満点と思いますが、今後の参考に審査員の立場として思うところを少しお話いたします。 個人的に思うところとしましては、この年頃でしか出せない無垢さ、躍動感、ワクワクする気持ちを大切にして欲しいということです。 音楽は楽しい!ピアノが好き!はやはり音に乗って魅力が伝わります。整えすぎて枝葉を切りすぎてしまわぬよう、伸び代のある演奏を大切にしてください。 そして選曲はポイントとなります。コンクールまで長く向き合う曲ですから、弾きたい意欲と学びに繋がる選曲をしたいものです。長い期間同じ曲をお勉強していると気持ちや練習が滞ったり、かえって分からなくなってきたりもするものです。その時間も実は大事で、急に出来なくなったり迷ったりする時こそ、そこが苦手だったんだ!と解決して次へ進むチャンスです。遠回りと思えることこそ上達への近道ではないでしょうか。 拍子につきまして。どうしても縦割りになってしまったり何拍子か分かりづらい演奏もありました。弾き始める前から気持ちが動きに乗ること、そしてしなやかな曲線、例えば三拍子は円を描くように拍子の流れを感じてみましょう。 どんな過程も結果も無駄なことは決してありません。長い目と広い心、焦りは禁物。目には見えなくとも、コンクールを終えた夏に手にしたものは何ものにも代え難い貴重な経験です。前を向いて自信を持って歩んでください。 また来年も多くの方のご参加と輝く才能との出会いを楽しみにしています。

小学校 2 年生の部

藤田裕佳子 先生

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本選会に出場の皆様おめでとうございます。 予選を通過した皆様の演奏は、とても素晴らしかったです。 一般的に「上手」と言われる演奏について、「上手」とは何かを考えながら、演奏を聴かせていただきました。 音そのものの力は、大きな要素の一つであると思います。演奏者が変わると、同じピアノから全く違った音色がホールに響きます。その音色は聴衆をふり向かせる力となります。 課題曲についてはバロック音楽なので、その様式が重要です。アリエッタは歌を意味し、メヌエット・ガボットは舞曲です。それぞれに拍子・テンポ等の特徴をもったものになります。それらの特徴をつかんで演奏することをお勧めします。 選択曲についても、作られた時代の音楽的特徴をつかみ曲にイメージをもって演奏することが大切だと思います。 また、一回のコンクールでの演奏に自分の力を出し切るのは、とても難しいことです。本番でとてもうまく弾けた方もいらっしゃると思います。とても良いことですが、それに安心せず、やはり普段の練習をきちんと積み重ねてください。逆に普段は上手くできているところで失敗してしまった方もいらっしゃるかもしれません。普段はできているから…で終わってしまわず、その理由を考えてみてください。そして普段の練習でそのことに対処することで、必ず今回の失敗を克服できると思います。コンクールは目標であり、結果がすべてではありません。その結果に一喜一憂することなくピアノを楽しんでください。来年は3・4年生の部の曲になります。その時までに音楽を楽しみながら、いろいろな力を蓄えて、また来年演奏を聴かせていただくことを楽しみにしております。 今回皆様に一番お伝えしたいことは、もっと音楽を聴いてほしいということです。自分の演奏後、ほっとして疲れているのもわかります。ですが自分が一生懸命取り組んだ曲だからこそわかることもたくさんあります。コンクールは、同じ曲を同年代の方が演奏するのをたくさん聴けるチャンスです。自分自身で「上手」とは何かを感じていただきたいです。 皆様の素敵な演奏を聴かせていただき、本当にありがとうございました。

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小学校 3 年生の部

柏樹文子 先生

今年の夏の暑さにもめげず、予選から本選に向けて丁寧に磨き上げられた素晴らしい演奏を披露した69名の皆さんへ、まずは心から大きな拍手を送りたい気持ちでいっぱいです。 楽しい誘惑が多い夏休みに毎日練習に励むのは、ご家族の温かい支えなしでは叶わないことだと思いますが、長い時間をかけて向き合ってきた曲と自分の感性が共感する楽しさや、ひとつの舞台演奏の経験を経てさらに豊かな音楽へと向上した喜びも、大きな原動力になったのではないでしょうか。 本選会の会場は、どの地区予選とも違う大きなホールにもかかわらず、皆さんが臆せずのびのびと弾いている姿はたいへん立派でした。なかでも、弾き始めてから音の響きをその空間に合った良いバランスに整えていく演奏には、特に感心いたしました。弾きながら聴くことのできる冷静さと良い耳があってこそ実現できるものです。 冷静さは、テンポを作る上でも必要とされます。本番は緊張して心拍数が上がることもあって難しいのですが、曲に相応しいと考える理想設定だけではなく、自分が安定して表現出来る速さを常に心がけましょう。 そして良い耳は、自然なフレーズを作るためにも大切です。ピアノは鍵盤を上下に指を動かし音を鳴らしますが、横のつながりを意識したいレガート奏では、手首を柔らかく使い指から指へ腕の重さを移動させるイメージを持つとよいでしょう。前の音から指を早くあげすぎないのもコツのひとつです。また、5指それぞれの特徴を知って、隣り合う音の“強さや音色”を注意深く揃えていくことでも、自然な滑らかさが作り上げられます。いずれも、よく聴くことがポイントです。 強弱のみにとどまらず、柔らかさと硬さ、軽さと重さなどの音の表情によって、そのフレーズに適切な感情が伴われると、より魅力的に曲全体が発展すると思います。 習ったことを守るだけではなく、教えを身につけ感じたままに自身の音楽で語りかけてくるような演奏には、まだ諸々の技術が追い付いていなくても、心が動かされるような感動がありました。気持ちが伝わるというのは、本当の意味で音楽を勉強する一番重要な部分でもあります。 おひとりおひとりがご自身の感性を大切に、これからもピアノに夢中になれる時間がたくさん過ごせるよう願いつつ、1年後にまた素敵な演奏を聴かせて頂けるのを楽しみにしております♪

小学校 4 年生の部

大川直美 先生

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4年生71名の演奏を聴かせて頂きました。皆さん大変生き生きと伸びやかで、レベルの高い素敵な演奏が続きました。 予選を終えてから本選までの間、更に音を磨き表現を工夫し完成度を高められたことを感じました。一度ステージに上げた曲をさらにブラッシュアップする過程は根気強さが必要だったことでしょう。細部にまで拘りながら曲に向き合う経験は皆さんを大きく成長させてくれたと思います。 審査で聴く中でレガートの難しさを感じました。ただ単に「つなげて」弾くのではなく「なめらか」であることが重要です。ピアノは音が減衰してしまう楽器ですので、次の音に移る直前の音を聴きタッチをコントロールしなければなりません。フレーズがごつごつ聴こえたり、テンポ感にかかわらず停滞してしまったように感じました。年齢的にこれから手がしっかりして筋力がついてきますので、自分の耳で聴く音とタッチや腕の重さの感覚を感じて工夫してみましょう。 もう一点、表現について。楽譜の中にかかれた強弱記号、テンポなどの指示について考えてみましょう。誰かに言葉で何かを伝える時、大事なのはその言葉の内容、何を伝えたいかで、それを状況に応じて上手く伝えるために声の大きさや声色、ニュアンスが変わると思います。それと同じように作曲家が音符、フレーズ、指示記号などにどんな感情を込めたのか、心に思い浮かべながら表現しましょう。『強弱をつける』という言い方をしてしまいがちですが、強弱を『つける』ことが表現の目的ではないと思います。P(ピアノ)の指示は悲しい歌なのか、心の穏やかさなのか、遠くから微かに聴こえる音なのか、または大切に伝えたいからこその静かな言葉なのか・・・などなど。演奏者がはっきりとイメージすることで自然でありながら聴く人に伝わる表現になると思います。 4年振りに表彰式が行われ、ステージ上で晴れやかなお顔が見られ嬉しく思いました。一方で入賞を逃したり思うような演奏が出来なかったりと悔しい思いをした方もいらっしゃいましたが、それぞれに努力を感じたり、キラリと光る感性が聴かれたり、惜しい!と思うこともあり、点数にはしきれない沢山の素晴らしさが伝わりました。 コンクールが終わって様々な振り返りをされると思いますが、反省や改善点と共に自分の成長した点もしっかりと認めて今後に繋げて欲しく思います。 更に成長された皆さんの演奏を楽しみにしています。

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連弾の部 A・B部門

秋元恵理子 先生

連弾A、B部門にご参加下さった皆様、本選出場おめでとうございます。 そして予選に引き続き、素敵なアンサンブルをたくさん聴かせていただいて本当にありがとうございました。 連弾は弾く方も聴く方もとても楽しいですね。 しかしここまで来るにはいろいろなご苦労もあったと思います。 曲決めから練習時間、兄弟以外では練習場所の確保など、親御さんや先生のご負担も相当なものと想像に難くありません。また、ソロ部門と両方チャレンジした生徒さんは頭の切り替えも必要だったことでしょう。そういったいろいろな困難を乗り越えたことによって、この夏は皆さんがとても実り多い音楽体験をしたのではないかと確信しています。 この部門では先生の采配がとても重要になってきます。 まず、ペアを組ませるときに二人とも高い技量を持っている事に越したことはありませんが、片方が引っ張って行ける生徒だと、もう片方もつられてついて行きますので、曲が完成した時には弾けなかった生徒も随分上達していた、ということは良くあります。これも連弾効果の素晴らしいところですね。 先生の方でよく生徒の特質を見極めて曲決め、パート決めをすることが肝心です。 また音楽作りをするのも先生の大切な役目です。曲の解釈、バランスや呼吸のしかたなど、本当に教えることが山のようにあって大変ですが、皆で音楽を作っているという結束力が、どんどん音楽を良い方に変えて行くのもレッスンしていてとてもやり甲斐があるのではないでしょうか。そういったチームワークの良さが聴いている方にはとても楽しい音楽として伝わって来ます。 これからもたくさんの生徒さんがアンサンブルの魅力に目覚めて、どんどん連弾部門にチャレンジしてもらえるといいなと思っております。

連弾の部 C部門

若狭玲衣 先生

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連弾C部門に参加の15組の皆さん、大変お疲れ様でした。 連弾部門は自由曲ということで、国も時代も作風も全く違う作品が聞けるので、大変楽しみにしておりました。 皆さん見事に自分達の世界を作りあげていて、豊かな音量や表現力、迫力のある演奏に大変感激致しました。聞いていると自然に身体が動いてしまい、コンクールという事を忘れて楽しませて頂きました。 お互いしっかりコミニュケーションを取り合い、息が合っているのはもちろん、音楽の方向性やペダルの使い方まで考えられて演奏していて、ここまで作り上げるのに、一体どれくらい練習されたのだろう、きっと一朝一夕では仕上がらなかったはずだと思います。 ですが、お友達と音楽を作り上げていく事は、ソロとはまた違って、とても楽しかったことでしょう。 ピアノが上達するために、自分の音の響きをよく聞くこと、そして拍子やテンポをしっかりと感じることが大切ですが、この力を伸ばすために、違う人と一緒にアンサンブルするのがとても有効だと思うのです。なかなか異なる楽器と演奏する機会はないけれど、連弾は、1番気軽にできるアンサンブルなのではないでしょうか。楽しみながら音楽の力もつく連弾に挑戦する方が、今後さらに増える事を期待します。 なお、合図の取り方や息遣いは合っているのに、どうしても若干音の出るのがずれてしまう、という時は、お互いの打鍵のスピードが違っていることがあります。よく観察してみてください。 最後になりましたが、ここまで素晴らしい演奏に仕上がるまで御指導頂きました先生方、また、お子さん達の練習時間を調整したり、衣装にも気を配って下さった保護者の皆様、本当にありがとうございました。 また来年たくさんの演奏を聞かせて頂ける事を楽しみにしております。

小学校 5 年生の部 課題曲

工藤真樹子 先生

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皆さま、真夏の暑い中、本選会参加、お疲れ様でした。そしておめでとうございました。 5年生にもなりますと、新学期からの毎日や夏休みのごし方も低学年の時とは違って忙しい日々だった事と思います。 そんな中、参加された皆さんは、しっかりと練習時間を取って曲と向き合い、ご自身の感性と意思で音楽を作って大きなステージで堂々と表現されました。 審査員一同、心からの拍手を送りたいと思います。この貴重な経験は必ずや今後の宝になる事と思います。 ご指導された先生方、サポートされたご家族の皆様にもお礼を申し上げます。 課題曲のバッハには舞曲系とフーガ系があります。 今回の課題の中にもメヌエットやガヴォット、ポロネーズといった舞曲がありました。 インヴェンション、シンフォニアの中にも舞曲的な要素の濃い曲もあります。 舞曲を弾く際には、そもそもどんな特徴を持った踊りなのか、当時はどんな場面で踊られてどんな楽器で演奏されていたのか、それはどんな音色だったのかを知っている、ということが大切です。 現在では、当時の衣装や踊りの動画、他の共通する曲などをサイトから視聴する事も可能ですね。 ご自分が選んだ舞曲の特徴を知り、優雅なステップなのか、軽やかに跳ねているのか、威厳、風格のある堂々とした舞曲なのかを知った上で、チェンバロや管弦楽など当時の音色も念頭に置きつつ、音色、発想を作っていきましょう。 また、インヴェンション、シンフォニアは、バッハの最大の魅力であるポリフォニー(多声)の音楽です。 これを最大限に生かした表現にする事と同時に、縦に聴こえてくる和声の調和を味わい、カデンツをしっかり表す事が大切です。 ご自身で選んだ曲の特徴、性格をよく捉えながら、テーマの表情付けを考えましょう。 そしてテーマが出てくる度に反行形になったり、調性や声部などを変化させて現れます。その変化を伝えましょう。 テーマ以外の場面では、その位置付けを考え、テーマとは違った音色で、何が行われているのかを表す事が大切です。 全体の演奏の印象としては、皆さんよく楽譜を読み込み、分析されていると感じました。 そして、それを表現する際に、ホールという広い空間の中でどれだけ変化を付けて聴き手に届けられたか、というところに差があったかと感じました。 音色に変化を付ける際には、質感の違い、重さの違い、明暗の違い、濃淡の違い、遠近の違い、硬い柔らかいなどを意識して、出す音色を検討し、タッチやテクニックを選ぶ、という事が大切です。 そして聴き手に伝えるためには、音楽が流れるためのフレーズ感も重要です。 また、あまりゆっくり丁寧すぎると曲がまとまりません。テンポ設定も最終的には印象を左右しますのでかなり重要なポイントです。 ステージを何度も経験してゆく中で、どう聴き手に聴こえるか、という事を生徒さんも私たち講師も学んで行くものです。 今回の結果にはこだわらずに、これからもステージで素敵な音色を響かせる事を楽しんでどんどん挑戦していって欲しいと心より願っております。

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小学校 5 年生の部 選択曲

浅井智子 先生

本選会で演奏された皆さん、ご指導頂きました先生方、ご家族の皆様方、大変お疲れさまでした。厳しい地区予選を通過され、この本選会のステージに立たれましたことを心よりお祝い申し上げます。 みずみずしい感性と音楽性溢れる演奏を聴かせて頂き、その完成度の高さに審査員全員が驚き、そして感激いたしました。演奏して下さった皆さん、本当に有難うございました。  《小学校5年生の部・選択曲》は、時代も国も幅広く、それぞれの作曲家の魅力が凝縮されキャラクターのはっきりした作品が揃いました。その中から皆さんの持ち味を生かせる曲を選ばれ、見事に表現されていました。 今後ますますレベルアップして頂けますように、何点かポイントをお伝えしたいと思います。 ☆作品のイメージを明確にしましょう  ♪時代・国・作曲家に関すること  ♪タイトル・発想記号・形式  ♪作品に込められた物語や情景 ☆表現するためのテクニックを見つけ出しましょう  ♪演奏する時は指だけではなく全身で表現してください 〜指の角度、手のひらの支え、柔軟な手首、フレーズを先導する腕、身体全体の弾みなど  ♪声部のバランスには『音量とともに、音質を弾き分ける』ことが必要です ☆作品全体を見通して弾きましょう  ♪一曲をどのように始め、どのように発展させ、どのように終わるかというストーリーを明確に持ち、自分の言葉で語るように演奏して下さい  ♪大きなホールの空間では、自らが真に感動し、心を動かして表現した演奏こそが客席に届くのです コンクールの長い練習期間の中で、演奏する作品と同じ作曲家や同時代のオーケストラ曲・声楽曲を聴くことも、表現のヒントになることでしょう。 また、美しい物を見たり聴いたりする機会は、「感性」と「耳」を育てるためにとても有効ですので、積極的に作って頂きたいと思います。 これからも多くの素敵な作品と出会い、その美しさを楽しみながら、自分自身の可能性を大切に育てていきましょうね! また皆さんの演奏を聴かせて頂けますことを、楽しみにしております。どうも有難うございました。

小学校 6 年生の部 課題曲

山崎美嘉 先生

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本選会ご出場おめでとうございます。 予選から本選までの期間は案外長く、地区によっては1ヶ月程もあります。その期間、猛暑の中でモチベーションを高く保って練習するのはご苦労も多かったことでしょう。出場者はもちろん、ご指導なさった先生、支えてくださったご家族の皆様の努力に心から敬意を表します。 その成果が充分に発揮されたレベルの高い演奏を、楽しく聴かせていただきました。 課題曲はバロック時代の作品です。 皆さんは誠実に作品に向き合って勉強し、構成を捉え、丁寧に表現していました。美しい演奏が多かったです。 それはとてもよいことなのですが、少し物足りなさも感じました。選択曲になったとたんに、人が変わったように生き生きと演奏している方が多かったことも、そう感じた理由です。 構成を理解し、正しい音やリズムで演奏することは大切ですが、これからは、様式感、作曲家やその生きた時代、その作品の特徴を学んだうえで、もっと演奏を楽しんでほしいです。 旋律をうたうことに終始して、バックに存在しているはずの和声進行まで気が回らなかったり、気持ちが溢れすぎてロマン派のような歌い回しになってしまったり、丁寧に弾くあまり拍子感を感じられなくなってしまう演奏もありましたので、様式感を踏まえたうえで表現するというのは、中々難しいことではあります。 バロック時代は日本で言うと江戸時代に当たります。 バッハは日本という国を知っていたのでしょうか?ちょんまげを結ったお侍が「拙者は○○でござる」などという言葉を使っていた日本。 バッハの生まれたドイツではどんな髪型や服装をしていて、どんな言葉遣いをしていたのでしょうか? コピー機も録音機もない時代に生まれた音楽を、現代の、しかも遠く離れた日本の子ども達が弾いている。 その事実だけでもロマンを感じませんか? それぞれの時代の話し方(表現の方法)決まりごと(作曲形式)はありますが、人間の感情はどうでしょう? ある心理学者によると人間の基本感情は、喜び、信頼、恐れ、驚き、嫌悪、怒り、予測、期待の8つだそうです。これらは今も昔も変わらないのではないでしょうか。 想像力を膨らませると、疑問が出てきたり、発見があったりと、興味が湧いてくるはずです。 バロック作品は真面目くさって弾かなければならないのではなく、 もっと自由に表現すべきと私は考えています。 様式感を学ぶには様々なバロック音楽を聴くことがよい方法です。今はバロックダンスやヨーロッパの街並み、教会の中の様子などの動画を見ることもできます。自分の弾くピアノ曲だけでなく、チェンバロやオルガン作品、特にJ.S.バッハでしたら声楽の入るカンタータ、管弦楽曲などがお勧めです。それらを偉大な演奏家の演奏で聴き、なんだかよくわからないけど、なんかいい!素敵!と心が動いた経験を積み重ねていくことで、自然と様式感も身についていくものと考えています。 皆さんは来年は中学生になりますね。 これまでよりさらに学校生活が忙しくなりますが、上手に時間を使って、是非ピアノを続けてください。 コンクールは自分の望む結果が出るとは限りませんが、挑戦したことで確実に成長しています。背が伸びるタイミングが個々で違うように、努力の成果が出るタイミングも人によって違うものです。結果に一喜一憂しすぎずに、コンクールを自分のスキルアップの場としてとらえて、これからもチャレンジしていただきたいです。ピアノを通して、皆さんの人生が豊かなものになりますよう願っております。

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小学校 6 年生の部 選択曲

山下聡 先生

小6 52名 コンクール本選、選択曲 本選出場おめでとうございます。コンクール開始初期の頃は、正直札幌と地方のレベルの差は確かにありましたが、各地の熱心な指導者の努力のお陰で今ではそのような事は全く感じなくなりました。毎年当番審査員は1月に初めての会合を持ち課題曲、選択曲を決めて行きます。今回も偏ることなく全ての選択曲を選んでもらう事ができ選曲者側としてとても嬉しく感じました。 曲には様々なタイプがあります。時代によっても違うし、リズミカルな舞曲のような曲、ロマンを感じ良く歌う曲、テクニックが重要になる曲等…。 ただどの曲にも、音楽の三要素と言う物があり「メロディー」、「リズム」そして「ハーモニー」です。このどれかが欠けても美しい音楽にはなりません。しかし私はこれに「テンポ」更に美しい響きを作るための「ペダル」を加えたいと思います。いくら上手に弾いてもテンポが的確でないと良い評価は得られません、更に微妙なペダルによって音楽はとても魅力的にもなるし凡庸にもなります。上手なペダルは、ハーモニーに色合いを付け心情や情緒、雰囲気の変化を表します。しかしこれは日頃からの練習で響きを良く聞き分ける事が大事になります。 丁寧な演奏、考えられた演奏、磨かれた響きの演奏、品のある演奏等、今回の上位に入った方々はこれらがとても良く出来ていました。 私達は毎日鏡を見ても変化に全く気がつきませんが、以前の写真を見た時凄い変化に時々驚きます。それだけ気が付かないが変化をしているという事です。音楽も同じです。日頃から良く響きを聴いて練習していると気が付かないうちに、必ず大きな変化が現れて来ます。以前も書きましたがピアノの上達に特効薬はないし、残念ながら簡単に上手にはなりません。私も若い時は練習をしていて苦しいと思った時はありましたが嫌になった事はありませんでした。クラシックは繰り返しに耐えうる物です。また聞いてみたいと思う物です。それは文学でも美術でも同じです。 今回残念ながら入賞出来なかった方や、更に上を目指していたのに叶わなかった方も多いと思います。ただ1つ知っておいて欲しいのは、審査員は皆ピアノの専門家で考える事は大同小異だと思いますが、時には「皆同じ演奏を聴いたの?」、と思うほど違う点数が付く事があります。全員一致の方が珍しいかもしれません。ですから今回目標に達しなかった生徒さんもガッカリしないで下さい。あなた達の中にも、ある審査員にとっての最優秀賞者がいるかもしれないという事を。

中学の部 課題曲

青山佳奈美 先生

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皆さま!暑い夏本選会ご出場おめでとうございます!最近は数多くあるコンクールの中でも、42回の歴史があり、北海道内でもトップレベルの毎コンに於きまして、本選会進出出来た事は、どれ程の喜びでしょうか! 特に中学生は総勢70名のご参加となりました。 流石に本選会!堂々たる個性豊かな方々の熱演となりました。それぞれの方々がしっかりと自己主張されて、自分の世界観溢れる演奏に心から感動致しました。 シンフォニアから12曲、平均律9番プレリュード、フランス組曲3番よりサラバンド、ジーグとかなり性格の異なる課題曲でした。 感動的な演奏もあった反面、多少気になる点もありましたのでお伝えしたいと思います。 シンフォニアは調性が色々です。各曲にて印象を持ち、細部の変化や転調を意識して伝えて欲しいと思います。 平均律は皆さんよく弾いていらして、美しく丁寧な演奏が目立ちました。右手よく歌いながらも、左手の音楽をより感じて、和声や関連性も持って欲しかったです。 サラバンドはよく歌っておりましたが、より抒情的に2拍目の長い音符や多少の拍子感もあると良かったですね! ジーグは予選会よりもテンポが速すぎずに丁寧に弾かれておりました。右手立派ながらも、左手の音楽性や対話、細かい音符のクリア感も耳で感じられますように! 全体的に、音楽力豊かな素敵な表現力の演奏が殆どで、心から感動致しました! 結果は別れてしまいましたが、皆さまの未来は明るくて有望です! 素晴らしいステージを聴かせて頂きありがとうございました!私自身沢山の音楽的エネルギーを頂き感謝致します! 是非!来年もチャレンジして下さいね! 心から楽しみに! お待ちしております!

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中学の部 選択曲

棚橋妙子 先生

本選会にご出場された中学生のみなさん、心に残る素敵な演奏をありがとうございました。予選を経て夏休みになり、学業と練習の時間の使い方や体調の管理は、一層大変だったことと思います。サポートされたご家族の皆様、そしてご指導された先生方、大変お疲れ様でした。 会場で聴かせて頂いた選択曲に絞って、感じた事を述べたいと思います。 【各曲の心に残る演奏について】 ◎ハイドン・・・・・・古典の模範演奏を目指して、音の響きを工夫している演奏。タッチを揃えて、フレーズの変化を自然につけている演奏。 ◎ベートーヴェン・・・・・・自分の音をよく聞いている演奏。疾走感があり、メリハリがきいている演奏。 ◎メンデルスゾーン・・・・・・右2声のバランスがよい演奏。よく響く音で、表現力が伝わる演奏。 ◎ショパン・・・・・・左右のバランス良く、繊細さが光る演奏。 ◎グリーグ・・・・・・色彩感のある演奏。フレーズをよく歌っている繊細な演奏。 ◎ドビュッシー・・・・・・とても繊細で綺麗な音の演奏。内声の動きを大切にしている演奏。 ◎ラフマニノフ・・・・・・左の旋律をよく歌っている演奏。細かい音型を華やかに聴かせた演奏。 ◎プーランク・・・・・・順応性のあるしなやかな演奏。気持ちを作ってから弾き始める演奏。 ◎中村・・・・・・きれいな音で響きをよく聴いている演奏。繊細さが際立つセンス良い演奏。 【皆さんの今後のために一言】 ・作品の様式感や、背景、作曲者の作風など調べることも大切で す。 ・自分の持ち味や音質をいかした選曲や演奏をすることも大事です。 ・コンクールや試験では、1回で弾ききれるように心がけて練習してください。 【そして最後に】 私は今回の皆さんから、「心の成長を感じる」魅力的な演奏を多く聴くことができました。そして、結果が良くなかった方の中にも楽しみな才能の方がいらっしゃいました。今回の結果に驕らず、そして拘りすぎずに、また新しい勉強を始めて、また聴かせていただきたいと思います。

高校の部

内山いづみ 先生

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本選会に出場された高校生の皆様、それぞれに個性があり曲に対する想いが伝わる演奏ばかりで感心して聴かせていただきました。ありがとうございました。 高校生になると学業との両立でなかなか時間が取れず、限られた時間の中で練習をして参加された方も沢山いらっしゃったのではと思います。大変お疲れ様でした。 今回、皆様の演奏を聴かせていただいて選曲の大切さを改めて感じました。 高校生の課題曲は平均律、選択曲も作曲家の指定はありますが自由曲です。沢山の中から自分自身に合う曲を見つけ出すのは大変な事ではありますが、時間をかけてじっくり選び、取り組んでいただきたいと思います。 選曲には自分自身の特質を長所や短所も含めて理解している事が大事です。 それぞれが持っている音色は弾く人によって、まるで違いそれぞれの個性が出ます。どんな音色を出すのが得意なのか、自分自身の得意なテクニック、苦手なテクニック等も理解し持ち味を活かす曲、音楽に共感し肌に合う一曲を選んでいただきたいと思います。 実はそれが1番大変な事かもしれません。 今回入賞された方々は、曲に対しての想いが充分に伝わり、それぞれの場面に合った音色の変化も多彩で、技術的にも安定して表現出来ていました。 演奏者の曲に対するイメージや想いは伝わり表現したい気持ちは届くのですが、それが音を通してさらに伝えてほしいと感じる演奏もあり、大変惜しく感じていました。 今後もバロックから近現代まで色々なジャンルの曲に興味を持ち、時にはコンサートに足を運び会場で聴く音を実際体感しながら自分自身の耳を磨きじっくり曲に取り組み、また来年も挑戦していただけたら嬉しく思います。 皆様大変お疲れ様でした♫

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