第40回 毎日こどもピアノコンクール
本 選 会
審査員講評
コンクールを終えて、当番審査員の各先生から各部門についての講評をお寄せいただきました。
前半部門の総評
木村真由美 先生
昨年は動画での予選開催となった毎日こどもピアノコンクール、来年(2021年)はコロナは収束し、コンクールもコンサートもホールで開催される日常が戻っていると誰もが信じておりました。しかし、今年になっても新型コロナウイルスは変異を繰り返し、私たちを脅かし続け、マスク生活や行動の制限を余儀なくされております。
そのような中ではありますが、今年は第40回目となります毎日こどもピアノコンクールは予選からホールでの開催ができ、たくさんの方のご参加をいただきました。ありがとうございます。開催にあたりましてはステージでは一人一人ピアノ鍵盤や椅子の除菌消毒、ステージ袖での手指消毒や待機席の距離をとったり、ホワイエでは密を避けるなど、あらゆる感染対策を講じ、安心して演奏できる環境を整えていただきました。主催の毎日新聞社様はじめ開催に関わってくださいました関係者の皆様に感謝を申し上げたいと思います。
今年は子どもたちの奏でるピアノの音がホールいっぱいに響き渡り、コロナ禍でもこの場に戻って来れたことは、審査員一同感動でした。
久しぶりのホールでのコンクールに緊張された方も多かったと思いますが、それ以上にホールで演奏出来る喜びも大きかったことと思います。皆さんの演奏のレベルがとても高く、コロナ禍においても真剣にピアノに向かってくださっていることが何より素晴らしいと感じました。
ピアノを演奏することは競争ではありませんが、コンクールは皆さんが楽しんで演奏出来る様になるための学びの一つなのです。コンクールですのでどうしても賞がついてしまいますが、一番大切なのは、賞を取ることだけではなく、ある一定期間、課題曲に取り組み、完成させるためにコツコツと努力をすること。その努力の成果を披露するのがコンクールというステージなのです。
今回、審査席から聴かせていただき、どの方もその努力の跡が見え、その演奏にたくさんの感動をいただきました。日々支えてくださったご家族の皆様、ご指導の先生方には、感謝いたしますとともに、この日に向かって毎日努力をされた子どもさんをぜひ褒めてあげてください。そしてまた次なる目標に向かって新たな一歩を進んでいけますように、励ましていただけたらと思います。
来年もまた子どもさんたちがこのステージで伸び伸びと自分の音楽を奏でてくれることを願っております。そして来年こそはコロナの収束とマスクなしの自由な日常が戻っていることを願ってやみません。
幼児の部
青山佳奈美 先生
記念すべき第40回毎日こどもピアノコンクール本選会にご出場おめでとうございました。
連日の猛暑の中、練習を続ける事はさぞかし大変だった事でしょう。まだまだ遊びたい盛りですのに練習に励んだ生徒さん達、それを支えて下さったご家族の皆様、ご指導頂いた先生方、大変お疲れ様でした。
予選会から上位に選ばれて嬉しい本選会でしたね。未来への希望に満ち溢れた、キラキラ.ワクワクした演奏が沢山登場しました。緊張感ある表情でお辞儀をする可愛らしい姿に、目を細めながらも、真剣に演奏する意欲的なステージに圧倒されました。
皆さん、素晴らしかったです!
せっかくの講評ですので、審査員の先生方のお話し等も少しだけお伝えします。
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幼児の部は自由曲です。シンプルな曲からテクニックの難しい曲まで様々でしたが、未発達な指や身体的な面をよく考えて、無理のない選曲が望ましいと思います。小さいながらも完成度が高い表現を目標にしましょう。
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また、ペダルは上手な方々が多かったですが、足台や補助ペダルを使用しますので、配慮のある使い方を工夫出来ますように。
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そして子供達は速く弾ける事に楽しみを感じ易いですが、指が速く回るだけではなく、自分の音楽に耳を傾けて歌えるテンポ設定が出来るといいですね。
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これから多くを学ぶ子供達ですので、メロディは勿論ですが、拍子.リズム等も常に感じて、タイトルから音色や表現をイメージして心豊かな演奏を目指して下さい。
幼児の部総勢44名!
それぞれの気持ちいっぱいの表現力に心から感動致しました。これからの成長を楽しみにしております。また来年是非!聴かせて下さいませ。ありがとうございました。
小学校 1 年生の部
村上和歌子 先生
今年の本選もホール開催となり無事滞りなく閉幕いたしましたこと、運営に携われた皆様をはじめ参加者とご家族、熱心なご指導をされました先生方に心よりお祝いと感謝を申し上げます。
今春小学生の仲間入りをしたばかりの小1の皆さんが、堂々と大変素晴らしい演奏をされ感動いたしました。個性を活かした選曲も印象に残りました。
審査員一同からのアドバイスといたしまして、バロックの装飾音は美しく素敵に入れることを大切にしましょう。特に年齢の小さい内はあまり無理をすることはありません。自然な流れと様式、舞曲のスタイル等引き続き丁寧に学んでいってください。
左右のバランスコントロールも難しい年齢ですが、技術面に偏らず耳を養い育てていきましょう。そしてレガート奏法も、今後も深くじっくり取り組んで欲しいと思います。
これから先は長く、今は成長過程のほんの第一歩にすぎません。結果に一喜一憂し過ぎることなく、50周年にも参加を目指せるような長い目と広い心で息長く育てていただきたいと一審査員として切に願います。沢山のご参加ありがとうございました。
小学校 2 年生の部
棚橋妙子 先生
全道各地の予選から本選会に進まれた73名の演奏を、ふきのとうホールで聴かせていただきました。
今年は特に猛暑の中、皆さんよく準備されていたと感じました。ご家族のサポートと熱心な指導者のお力を受けて、生徒さん一人ひとりがのびのびと演奏されていて、高いレベルの中楽しく審査させていただきました。先ずは皆さんの努力とそれぞれの成果に拍手を送りたいと思います。
感性豊かで個性的な演奏も多かったのですが、さらに良い演奏を目指していただけるよう、いくつかのポイントを書かせて頂きます。
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バロックでは、特に切る音(短く弾く音)には充分注意すること、加減が難しいので。
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装飾音はその音を飾るものです。数にこだわりすぎて、元の音の長さやつながりを壊さぬように注意しましょう。
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舞曲の演奏では、曲を弾きこんでくると歌いすぎる傾向があるので、気をつけてほしい。
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音の響きをよく聴くこと。
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左手はテーマや和声、リズムなど大事な支えとなりますので、これからも意識して練習してほしい。
この本選会の経験から、皆さんの素晴らしい感性が一層伸びていきますことを、審査員一同、心より願っています。
小学校 3 年生の部
渡辺郁子 先生
小学校3年生の皆さんのレベルの高い演奏を聴かせて頂きました。自ら生き生きと音楽を表現されていて大変素晴らしく、これまでの熱心な取り組みがつぶさに伝わりました。惜しくも入賞されなかった方も僅差でしたから、是非また頑張ってください。
課題曲は二声でできており、時として重音や和音も出てきますが、どちらの旋律も大切にうたう姿勢がとても良かったと思います。さらにこれからは、バロックのスタイルに合ったうたい方を意識してみましょう。この年齢では、理論的に考えるというより、バロック時代の管弦楽、合唱、チェンバロなど、たくさんの音楽に触れ、感覚的に理解していくのが良いでしょう。
選択曲では、ペダルを使う曲もありますが、タッチの仕方でもペダルを踏んだ時の響きが変わってきます。ハーモニーがきれいに響きあっているか、左手の音がモヤモヤしすぎていないかなど、常に自分の音を聴いて、ペダルとタッチの両方で響きを調整してみてください。ホール、ピアノによっても響きが変わることは、ステージ経験で感じ取っていってください。
予選本選と同じ曲を一生懸命練習していくうちに、曲に適したテンポや表現の仕方がわからなくなることがあると思います。テンポが速くなり過ぎて表現が浅くなったり、うたおうとするあまりテンポが遅くなったりすることもあるかもしれません。そんな時には弾くことから一度離れて、改めて楽譜を見ながら音楽を頭の中で鳴らしてみましょう。また、色々な演奏家の演奏を聴いてみることも良いかもしれません。きっと新しい発見があり、新鮮さを取り戻せることでしょう。
いつか、成長した皆さんの演奏を聴かせて頂けるのを楽しみにしております。
小学校 4 年生の部
大川直美 先生
鬱陶しい日々に連日の猛暑が加わり、本選に向けた練習と体調管理はご本人もサポートするご家族にとってもさぞ大変であっただろうと思います。
そんな中でも参加者の皆さんが熱心なご指導の元でしっかりと練習を積んで素晴らしい演奏を聴かせて下さいました。とてもレベルが高く、十人十色の魅力に溢れ、それぞれに美点のある演奏を点数化しなければならない作業は悩ましいものでした。
ミスなくテクニックも整えられ、集中力をもって練習の成果を発揮されていましたが、さらに自分の言葉として表現されていた方への評価が高かったように思います。
聴く人の心に伝わるのは大きい音でも速いテンポでも大げさなデュナーミクでもありません。自然な呼吸に乗った自然な表現をする事、イメージをもって音色を選択する事、拍動を感じる事、自分自身の心で感じたもの、伝えたいと思うことをのびのびと表現する事などを心がけてみてください。そしてそのためのセンス・感性は日頃の練習から耳と心を働かせること、様々な曲に触れる事、沢山の音楽体験からも磨かれていく事と思います。
来年は高学年となる皆さんへのアドヴァイスとなれば幸いです。
今後更に大きく成長される事を願っております。
連弾の部
松原寄美子 先生
本選の前半3日間を終える事が出来ました。
沢山の感動がありました。
運営に携われた皆さん色々なご苦労があった事と思います。ありがとうございました。参加された皆様のご理解とご協力に感謝いたします。
連弾について審査会議で話題になった事、これからの練習のヒントになりそうな事等をお伝えします。
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1台の楽器を二人で演奏しますから、ピアノのポジションによる響きの調和、バランス等はどんな曲でも重要です。
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4手の役割、4手のかかわりをお互いに共有しましょう。
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ソロでは5本の指×2ですが、連弾では5本の指×4になります。それゆえソロではかなわない音のあつみ、響きの多彩さを得ることができます。
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曲を仕上げていく過程で合わせる事に考えがいきがちですが、ソロの時と同様、作曲家、時代、スタイル等を考慮し4手のアンサンブルと考えてみると良いと思います。
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ピアノのポジションとオーケストラの楽器の音域を考えあわせ音色のイメージを考えてみましょう
今回は28曲のエントリーがありました。時代、作曲家、も様々でしたし、ソロ曲を編曲した曲などもありました。
聴かせて頂きました審査員一同、レベルの高さと連弾の楽しさを称賛していました。どうぞ連弾曲を学んでみてください。
皆さんの演奏を聴かせて頂くのを楽しみにしています。
小学校 5 年生の部・課題曲
梅木康代 先生
本選会ではとても素晴らしい演奏を聴かせていただき、感動しております。誠心誠意、練習を積み重ね、あきらめず挑戦してきたことが伝わりました。
様々な課題曲の中から、みなさんの個性と演奏技術が発揮した演奏が多かったと感じました。
心から歌う、伝える、呼吸感、集中力、構成の理解・・・
ひとつの曲の中にたくさんの側面から向き合い演奏されている姿は心に響いてきました。
一方、アウフタクトや休符から始まる楽曲は、ふさわしい曲の入り方を工夫したら良いと感じる演奏がありました。
また、速い動きは指先だけの動きではなく、その中にある調性、和声感、方向性などを感じていただけると、更に立体的な音楽を創ることができると感じました。
左手にも曲の全体を支える大切な主題や要素が内在していますので耳を傾けてください。
今回、コンクールに向けて取り組んで来たことは、みなさんの未来にとって、必ず有意義なステップとなったことと確信しております。
本当に素敵な演奏をありがとうございました。
小学校 5 年生の部・選択曲
佐藤睦美 先生
猛暑の中での練習は、本当に大変だったことと思います。
ですが予選から更に向上された熱演を聴かせて頂き、大変嬉しく思っております。ありがとうございました。
個性豊かで非常にハイレベルな演奏が沢山あり、審査をしながら楽しませて頂きました。皆さん感性に合った曲を上手に選ばれ、それぞれの時代様式を理解され、よく勉強されていたと思います。
又、お一人お一人が思いを心にのせて演奏されていたのが印象的でした。ステージでのその様子がとても頼もしく感激しております。中でもその場の響きを敏感にキャッチし、音色豊かに、自分らしさをより発信、発揮出来た方が、上位に行かれたと思います。
審査は僅差でした。残念ながら入賞されなかった方も気落ちせずに、是非また頑張って欲しいと心より願っております。
個々の素晴らしい感性が更に開花されることを願いつつ、来年も心身共に成長された皆さんの演奏を聴かせて頂けることを、楽しみにしております!
小学校 6 年生の部・課題曲
藤田裕佳子 先生
本選会出場おめでとうございます。予選が終了してからの数日間、例年にない猛暑のなかたくさんの練習を重ねてこられたことと思います。良く仕上がったすばらしい演奏を聴かせていただました。
5・6年の課題曲はすべてバッハ作曲の作品で、フランス組曲やパルティータから舞曲、そしてインベンション(2声)からの自由選択でした。
選んだ曲について、テーマの特徴、テーマ以外の動き、曲の構成、転調を含む調性、曲に合ったテンポ感など、本当によく勉強なさっている演奏だったと思います。
そこで、一つの曲としてまとめる時、音色がとても重要になってきます。弾き始めた一音目から美しく表情豊かに響き、人を惹きつける力のある音が求められます。また、その音色によって、声部の違いや音楽の性格を表現することもできます。
今後、多くの音色を表現するテクニックと、それを聴き分けることのできる耳の訓練が大切になってきます。バッハの曲のなかで増えていく声部に対応し、各声部の音楽を楽しめるよう、練習を深めてくださることを期待しています。
皆さんにとって小学6年間のまとめとなる、素晴らしいコンクールだったと思います。
小学校 6 年生の部・選択曲
三橋菜穂子 先生
今年の本選は、コロナとオリンピックと猛暑が重なるという大変な状況下での開催でしたが、6年生の皆様は、気迫溢れる堂々とした演奏をされ、聴く方々を魅了して下さいました。
心の中で、歌いながら、リズムを刻みながら、全身でご自身の音楽を表現されている感性豊かな方が多かった印象です。
細かい工夫が沢山されている曲作りに、ご指導下さる先生のご指導力の高さを感じ、感銘を受けながら聴かせて頂きました。
今後のために参考にして頂きたい点ですが、拍感、フレーズ感、様式感、バスの支えの響き、に配慮して頂きたい事と、ご自身の音をよく聴くためにも、身体を動かし過ぎない事も大切かと思いました。
来年は中学生になられる皆様のご活躍を、心より楽しみにしております。
是非、またこのステージで弾いて頂けますことを祈っております。
素敵な演奏を、ありがとうございました。
中学の部・課題曲
八田寿美恵 先生
コロナ禍で様々なことが制限されている中、日々真摯にピアノと向き合い、その力をホールで発揮している姿に、大変感動いたしました。そしてご自分に合った選曲を、皆さんが自分自身の言葉、音楽として表現できていることを嬉しく思いました。
課題曲、選択曲を2曲続けて演奏する時には、それぞれの演奏様式をしっかりと弾き分けて表現することが大切です。
課題曲のバッハは、各曲の調性やキャラクターをよく捉えている演奏が多かったと思います。ただ、テーマだけが強調されてしまったり、歌う気持ちが強すぎてテンポが揺れてしまうこともありました。
アゴーギクはあっても基本の拍感を最後まで持ち続け、拍の波に乗って進めて行きましょう。
バッハの音楽は、良い拍感を持ち、左右の響き合いから生まれるハーモニーに耳をすましていると、人間の持つ自然な感情、喜怒哀楽などが内面から滲み出てきます。それらを客観的に聴き、人に伝える演奏を目指してください。
今回惜しくも賞に結びつかなかった方々も本当に僅差な結果です。皆さんの音楽への愛情、取り組みは充分に伝わりました。どうかこれからも前向きにその気持ちを持ち続け、ピアノと共に心豊かな人生を歩んでいってください。
また聴かせていただくのを楽しみにしています。
中学の部・選択曲
酒井由美子 先生
中学生の出演者68名中、
小栗克裕/水面に映る春の月 16名、
ベートーヴェン/悲愴 11名、
フォーレ/即興曲 9名、
シューマン/飛翔 8名、
ショパン/ポロネーズ 7名、
ドビュッシー/月の光 6名、
プロコフィエフ/プレリュード 6名、
モーツァルト/ソナタ 3名、
ショパン/ワルツ 3名、でした。
最も多く弾かれた「水面に映る春の月」は、作曲者の小栗克裕さんの亡き奥様を偲んで作られた作品だそうです。奥行きのある心に沁みる演奏が多く聴き入ってしまいました。
「ベートーヴェン」「モーツァルト」「フォーレ」、音色までよく考えた完成度の高い演奏が多かったです。
「シューマン」「プロコフィエフ」、テクニック的難易度が高い曲ですが、緊張感を伴うステージで果敢に熱演する姿にこれまでの練習の成果を感じました。
「ショパン/ワルツ・ポロネーズ 」、拍子感・リズム感良く艶のある音でホールが華やぎました。
「月の光」、中学生でもここまで心を揺さぶることが出来るのかと思う名演。
皆さん本当に素晴らしい演奏でした。コンクールを通して素敵なピアニストに出会えた事に感謝します。
高校の部
棚瀬美鶴恵 先生
コロナ禍での本選会を、ホールで聴くことが出来まして感動と喜びに溢れました。
素晴らしい演奏をされた高校生の皆様、そして、ご指導されました先生方、ご父兄の皆様に"ありがとう"とお伝えしたいです。
年々、レベルアップしております高校生部門ですが、今年はさらに完成度と集中力の高い演奏に、審査員一同コンクールということを忘れて感動して聴かせて頂きました。
皆さん大変な高得点でしたので、入賞を逃した方は自信を失わずに更なる成長を目指していただきたいと願っております。
また、それぞれが自分に合った曲を選択されて、個性を発揮されていたことも、審査員を惹き付けました。
音楽による魂の躍動を、この度の高校生の皆様から感じさせて頂きました!
結果に一喜一憂せずに、また来年も素晴らしい演奏を聴かせて頂きたいと思います。