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毎日こどもピアノコンクール

審査員

講評

第39回 毎日こどもピアノコンクールを終えて、当番審査員の各先生から各部門についての講評をお寄せいただきました。

 動画予選 審査講評

山下聡先生

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山下先生

 コロナ禍において毎コンがここに至るまでのスタッフのアイデア、努力と熱意に感謝をし、更に大勢の生徒さんの音楽に打ち込む真摯な態度に改めて感動いたしました。今回初めて録画審査を経験して私なりの感想を述べてみたいと思います。

 最初に思った事は、「それぞれに違った環境(ピアノ、部屋、録音機材等)で公平に審査を出来るのだろうか?」と言う不安でした。「スマホ程度の機械で細やかな音が聞こえるのか?」と思った反面、また「生徒にとっては、やり直しが出来るので案外チャレンジしやすいのではないか」とも思いました。

 

 スタッフから「環境の違いを考慮して審査をして欲しい」等要望もありましたが、実際に聞いてみてやはり環境の違いは否めないと言うのは事実でした。音が割れたりする場合は機材の影響だと分かりますが、特に音の硬さ等は生徒の弾き方なのか、機材のせいなのか迷った事もありました。しかし私が感じる審査の1番の対象は、自然な曲作り、演奏者の語る物語、歌心等が伝わることであり、食品で言えば添加物を一切加えない、食品そのものの味、美しさを引き出す事でそれにはそれ程影響はありませんでした。

公平さを期すためには、全員が同じホールで録画されたDVDを基に審査をするのが理想ではないかと私は思いました。

 ただ家での審査は時間にゆとりがあり、ゆっくり講評を書く事が出来ましたし、いつも演奏番号1番の生徒は不利と言う考えもありますが、もう1度聞く事も出来ました。

 生徒さんが録画をする場合は何度も撮り直しが可能でしたが、私の生徒の場合なかなか撮り直しをしてもそれ以上に良い演奏が出来ず「撮り直しスパイラル」に陥る事になりました。生徒に「これで良い?」と聞くと「いや、もう1度やりたい!」と、普段には考えられない違う一面を見る事も出来ました。生徒さんのDVDを観ていると、この画面の先にスパイラルがあったなと思わず笑いそうになる事もありました。

 これからどのような方向に向かうのかは分かりませんが、今回の審査が私にとって貴重な体験になった事は間違いありません。

(2020年8月3日付 毎日新聞朝刊より転載)​

 動画予選 審査講評

棚橋妙子先生

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棚橋先生

 今年の毎日こどもピアノコンクールは、今まで経験したことのないコロナ禍により、録画による予選審査を初めていたしました(参加者から送ってもらった録画を、業者が修正することなく編集し、そのDVDを審査員が各自審査するというものです)。参加者の皆さんは、撮り直せるという安心が引き起こす緊張と闘いながら、唯一の録画を送って下さったと思います。

 私は皆さんの演奏を自宅のテレビで再生しましたが、担当する学年や人数により、DVDを一旦停止したり休憩を挟んだりと、耳や気持ちが疲れないよう工夫をしました。映像から聴こえる音は、会場で聴く音とは違うものですが、思ったより様々な事が聴き取れたように思います。録音環境は全く関係ないとは言えませんが、演奏者と楽器が一体になっていたり、演奏に安定と余裕を感じると瞬間的に良いと思っていたように思います。


 今年の参加者の方々が、自分の演奏を客観的に聴く機会と受け止めて下さること、そして今回の新しいチャレンジが今後の音楽の勉強のプラスとなることを、心から願っております。

(2020年8月3日付 毎日新聞朝刊より転載)​

三浦明子先生

​ 本選会審査講評

【幼児の部】

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三浦先生

 本選会幼児の部は、昨年39人、今年は30人。コロナ禍にあってもピアノが好きで純粋に一生懸命頑張っている姿に心打たれました。


 幼児は、まだ音楽学習のスタートラインに立ったばかりで、しかも今回は予選が動画審査。初めて舞台に立ったという生徒さんもたくさんいたと思います。そんな中で、先生から教えられたことをしっかり理解し、舞台上に1人で向かって、自分自身の心に挑まなければならない、その集中力にとても感動しました。そして、選曲の大事さも幼児の部では大きいです。その子の個性や感性が発揮でき、手とレベルに合った最適な選曲を更に心がけてみて下さい。

 幼いながらも、自分の気持ちと一緒に音楽が湧き上がった時、自分自身も聴き手も感動する瞬間があることでしょう。これからどれほど伸びるか期待度大の未知なるピアニストさん達。今後も大いなる成長を楽しみにしております!

​ 本選会審査講評

【小学校1年生の部】

酒井由美子先生

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酒井先生

 コロナ禍での入学式を迎えた新1年生で環境が大きく変わったにも関わらず、ピアノとは上手にお付き合い出来ていたように感じました。審査員一同、大変嬉しく思いました。


 伸び伸びとした上品な演奏が多く、特にネーフェやメヌエットの美しいメロディーが印象に残っています。また、指先だけでなく心で演奏している方が沢山いらっしゃいました。低年齢に合わせた良い指導を受けてらっしゃるのですね。

 

 今すぐの成績にならなくても、これからのあなたの音楽に繋がっていきます。このコンクールを利用してどんどん素敵な音楽を作れるようになってくださいね。

​ 本選会審査講評

【小学校2年生の部】

村上和歌子先生

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村上先生

 大変素晴らしい演奏を聴かせていただきました。コンクールに向けて努力された参加者全ての皆さんに感動いたしました。結果は僅差です。良いご指導とご家族の支えが大切なのはさることながら、自身の中から発する自然な演奏に魅力を感じました。そして良い音を聴き分ける耳を養うこと、必要な基礎力の上で楽譜からのメッセージを受け取り、自分の音で表現できる心を育むこと。他者と競うのではなく自分に何が出せたかが一番の喜びとなれば、学びや成長の機会としてコンクールの大きな意義を見出せると思います。


 成長も一人一人違うように、個性もそれぞれ。だからこそ音楽は美しいのです。これからも音楽とのかけがえのない日々を息長く歩まれることを心から願います。

​ 本選会審査講評

【小学校3年生の部】

梅木康代先生

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梅木先生

 生徒さんたちは、何としても演奏したい!
 保護者の皆様も何としても舞台に立たせてあげたい!
 私たち講師も何とか演奏させてあげたい!
 毎日新聞社も何とか主催したい!

 そんな願いの総和が開催に繋がったと思います。音楽の神様は、私たちを応援してくれていると思いました。当たり前がどんなに有難いか噛み締めながら、細心の注意を払い、開催できたことは感無量です。


 小学3年生のみなさんの演奏は、完成度、表現力、演奏技術のレベルが高く、感動する演奏がたくさんありました。私たち審査員一同は、胸が踊り、感動しました。一方、残念ながら入賞できなかった生徒さんの演奏も、入賞したみなさんとは、ほぼ僅差でした。審査で入賞ラインを決める時は、胸が痛みました。

 入賞できたみなさんも、そして形としては入賞できなかったみなさんも、今回の演奏で訪れた想いを、次につなげていただければ嬉しいです。

​ 本選会審査講評

【小学校4年生の部】

藤田裕佳子先生

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藤田先生

 本選会出場おめでとうございます。

 今年の予選はコロナの感染防止のため録音審査となりました。本選会に出場した皆さんも、久しぶりのステージの演奏だったと思います。ホールでの演奏に向かう皆さんの意気込みと、嬉しさが伝わってくる本選会でした。


 皆さん、それぞれがご自分に合った演奏曲目を選んでいらっしゃったのが印象的でした。自分の演奏の良さを充分に引き出すことができる曲目を選び、その良さを十二分に発揮した演奏は生き生きとホールに響き、聴衆を魅了していました。皆さん本当に良く弾いていました。

 音楽の美しさを作り上げる要素の一つ一つに気持ちが込められているか? また自分の演奏した音を聴いているか? が美しい演奏になるかどうかの決め手になるように思います。


 どんな時にも、音楽は心に安らぎを与えてくれます。どうぞこれからも音楽を楽しんでください。素敵な演奏をありがとうございました。

​ 本選会審査講評

【小学校5年生の部】

渡辺郁子先生

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渡辺先生

 今年は、緊急事態宣言でレッスンをお休みせざるを得なかったり、予選がWEB審査になったりで、準備も大変だったことと思います。

 その中、演奏はレベルも高く、個性に合った選曲で、伸び伸びと曲のイメージに合った音色や表情が印象的でした。また、曲全体のクライマックスの表現もうまく、とても素晴らしかったです。


 生演奏も充分聴ける日が早く来るのを願いながら、皆様が更にたくさんの音楽経験を積み重ね、大きく成長されることを期待しております。

​ 本選会審査講評

【小学校6年生の部】

三橋菜穂子先生

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三橋先生

 6年生の皆様は、本選に相応しい大変感動的な熱演をされる方が多く、演奏のレベルにも大差はありませんでした。


 そういった中でも、ご自身の出される音をよく聴かれ、美しい響きや変化のある音色で、余裕を持って表現されている方が上位に入られたと思います。

 

 このご経験を、次のステップに活かして頂き、来年は中学生になられる皆様のご成長を、心より楽しみにしております。

 素晴らしい演奏を聴かせて頂き、有難うございました。

​ 本選会審査講評

【中学の部】

内山いづみ先生

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内山先生

 今回大変な環境の中でも、しっかりとピアノに向き合って取り組んでいたのが伝わる、完成度の高い演奏が多かったように感じました。

 

 その中でも、曲の魅力を最大限に引き出されて演奏出来ているかが大切だと感じました。音色の多彩さもとても大切です。柔らかく幅がある音、伸びやかな音、キレの良い音の中にも、響きがあるのを感じましょう。

 常に探究心を忘れず深く作品に入り込めているかが伝わるように、様々な角度から丹念に曲を作り上げていっていただきたいと思います。

 中学生の課題曲や選択曲は、弾きごたえもあり、深く勉強していくほど、人の心に響きます。これからも、是非チャレンジして研鑽を積んでいっていただけたらと思います。

 本選会審査講評

【高校の部】

秋元恵理子先生

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秋元先生

 高校生のみなさんは、このコンクールを受けるにあたって、いろいろな思いを持って曲を選び、取り組み始めたことと思います。
 それがかつて経験したことのないこの事態に、練習していても心が折れそうになる瞬間が何度もあったのではないでしょうか。


 そんなことを考えながら聴かせていただいたみなさんの熱演は、ホールで久しぶりに生演奏を聴ける喜びと相まって、どの演奏も大変心に染み入るものでした。

 どうかみなさんにまた、こうしたチャンスが与えられることを願って、ピアノへの情熱の火種を消さずに持ち続けていただきたいと思います。

​ 本選会審査講評

【連弾の部 A部門】

工藤真樹子先生

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工藤先生

 息の合った完成度の高い演奏ばかりで、とても気持ちよく聴かせて頂きました。今期は練習の条件が揃わず苦労された組みも多かったかと思いますが、それを感じさせない説得力を持った演奏、皆さんの心意気に大変胸が熱くなりました。


 連弾は、ソロとは一味も二味も違う、連弾ならではのサウンドの広がりが醍醐味です。4本の手がそれぞれの役割を心得て、リズムやハーモニーを調和させながら、同じ目的地に向かって呼吸を合わせるのは簡単な作業ではありませんが、2人の音楽がまとまってきた時には喜びも大きいですね。

 フレーズを作っていく時に、cresc.やdim.のお互いの距離感も揃えたり、ブレスする時にも慌てず落ち着いて2人分の呼吸を取る様に心掛けるとさらに聴き手に迫ってくる演奏になるかと思います。

 今後さらに連弾での楽しみが皆さんに広がる事を願っています。

​ 本選会審査講評

【連弾の部 B部門】

柏樹文子先生

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柏樹先生

 どのペアも楽曲のイメージをよく捉えて、息の合った演奏を聴かせてくれました。高学年らしく響きや表情が音楽的にとても豊かで、大変聴きごたえがありました。

 今後も年齢が上がるにつれ、お互いの音楽性や解釈にも広がりが生まれてきます。

 それぞれが楽譜に忠実な演奏をするのは勿論ですが、さらに相手の演奏をよく聴き、理解して寄り添うことで、より調和した響きを保った『2人ならではの演奏』へと繋がってゆくことと思います。

 予選を含め、連弾部門に参加された皆さん全員が、ひとつの音楽を人と共感する喜びと、今回の経験を糧に、また大きく成長されますよう心から応援しています。

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